「EX200は完璧」 EX200

「EX200は完璧」 EX200

建機を訪ねて LEGEND03

有限会社苅部建設

キレイな機械で、丁寧な仕事を。
建設機械に掲げる2つの看板。

田園地帯が広がる茨城県下妻市に拠点を構える有限会社苅部建設。土木事業を中心に、建設機械を駆使したスピーディかつ丁寧な仕事ぶりで、地元の大きな信頼を得ている。その裏には、1台1台の建設機械に対する強いこだわりと、深い愛情が隠されていた。

現場が求めるバランス感覚

苅部建設が初めて日立建機製品を採用したのは1985年(昭和60年)。日本がバブル景気を迎える目前、道路掘削用としてUH025-7(側溝掘りフロント仕様)が導入された。代表取締役社長・苅部好美氏は当時をこう振り返る。「あの頃、他社の油圧ショベルがスイング式だったのに対し、正面を向いたままアームを左右に動かし塀や壁などに沿った側溝掘り作業ができるUH025-7は画期的だった」。
UH025-7を皮切りに、苅部建設では立て続けに日立建機製品を導入した。中でも苅部社長が絶賛するのがEX60URとEX200だ。「正直、当時の日立建機の機械にはまだ当たり外れがあったけど、EX60URとEX200は完璧。動かすにしても止めるにしても、スーッと思うままに操れる。バランス感覚が素晴らしい」(苅部社長)。
道路掘削において重要になるのが、掘り出した土砂をいかに早く積み込み、ダンプを効率よく回転させられるかである。1回5分の差が会社の利益を左右する現場において、流れるように動かせる日立建機の油圧ショベルが果たした役割は大きかったという。「特に交通量が多いときは、作業効率を上げるためにバケットを0.7m3から0.9m3に付け替えて使ってたけど、それでもバランスが良い。たまにレンタルで他社機を使ってみると、操作した後の身体の疲れが違うんだよね。バケットの操作にしても、ブームを上げるにしても、旋回するにしても、油圧の微妙なバランスの違いで使いやすさが大きく変わってくる」(苅部社長)。
日立建機製品の乗り心地について、同社の専務取締役・苅部直希氏はこう表現する。「他社の油圧ショベルは乗っていてどことなくフワフワする感覚があるんだけど、日立建機はずっしりと安定している感じですね」。
EX200は、現在も同社の資材置場において、最新の油圧ショベルにも引けを取らない動きで現役稼働している。「外にはしばらく出してないけど、まだまだ充分使える。いざというときは現場に持っていく準備もできていますよ」(苅部社長)。

代表取締役社長 苅部好美氏

代表取締役社長 苅部好美氏

機械はもっとシンプルでいい

長年にわたり日立建機製品を使用する苅部社長に、あえてその不満を尋ねてみた。「昔の機械と比べて、最近のものは確かに進化していると思う。ただ、もう少しシンプルでもいいんじゃないかとも思う」。機能の進化により、特にベテランスタッフにとっては余計に分かりにくい操作が増えたという。実際、苅部専務が現場でぎこちない動きをしている建設機械を見かけ、運転していたオペレータに事情を聞いてみると、ボタンが多すぎて操作に戸惑っていた、ということもあったそうだ。
「熟練のオペレータになればなるほど、機能に頼らず自分の感覚で動かせるし、不具合もすぐに発見できる。例えば、機能フル装備のタイプと作業性能などは同等で機能を最低限に減らして価格を抑えたシンプルなものが発売されると、意外と需要あるんじゃないかな。要は選択肢が欲しいんですよ」(苅部社長)。
苅部社長が漏らす不満の背景には、機能の充実により若手オペレータの技量向上に支障を来すのでは、との不安もあるそうだ。機械が簡単に動かせるようになっていく半面、それに頼りすぎるとオペレータの腕も落ちてしまうのではないか。いざ、その機能が使えない現場に遭遇したら、技量のないオペレータはどう対処するのか。メーカにもその責任の一端があるとすれば、どう教育していけるのか。そのバランスは、今後の建設機械業界のひとつの課題になっていくかもしれない。
「機能を充実させることもいいけど、シリンダ、油圧ホース、ピンなどのベーシックな部分を強化することにも力を入れてほしい。派手な部分よりも、目に見えない小さな部分が大事。実際に使っているユーザは、そこを一番気にしているからね」(苅部社長)。

専務取締役 苅部直希氏

専務取締役 苅部直希氏

同業他社には絶対に負けない

苅部社長は現場で働く社員に対し、常々「自分の庭をやる気持ちで挑め」と声を掛けている。もし、人に任せた自分の庭が適当な仕事で片付けられていたとしたら、どう感じるか。苅部建設は常に高い意識で、各現場に丁寧に取り組んでいる。
「建設業にもいろいろなスタイルがあるけど、同じように建設機械を使う同業他社には絶対に負けたくない」(苅部専務)。その意識は、仕事の丁寧さだけではなく、スピードにも表れる。現場に対する圧倒的な集中力で、安全且つ迅速に熟す。
「そうやって仕事を増やして利益が上がれば、社員にも賞与や給料で還元してあげられる。ウチは小さい会社だけど、一生懸命働けばしっかり結果がついてくるということを示してあげたい」(苅部社長)。同社は、決して自ら売り込むわけではない営業スタイルながら、長年にわたり堅実な経営を続けている。

  • 道路の掘削工事を行うICT建機ZX135US-5B

    道路の掘削工事を行うICT建機ZX135US-5B

  • 社内はアットホームな雰囲気に包まれている

    社内はアットホームな雰囲気に包まれている

ユーザが背負う2つの看板

所有する建設機械1台1台に対する愛情が深い苅部社長。新車の納車時には、必ず自ら乗り込み、その動きやバランスをチェックする。そんな苅部建設の機械へのこだわりは、外装の手入れにも徹底されており、少しでも汚れや傷を見つけたらすぐに直すという。「機械に汚れや傷がついていると、オペレータの扱いも雑になる。そうなると仕事のクオリティは下がるし、事故にもつながりやすい。常にキレイな機械を使うことで、オペレータの気持ちも引き締まる」(苅部社長)。「だから、もし私たちが傷をつけてしまった場合は、その日のうちに大急ぎで日立建機に連絡する。社員に示しがつかないですから」(苅部専務)。
同社では、メンテナンスに加え、日立建機を通して定期的に機械の全塗装も行っている。その費用は、決して安いものとはいえない。色を塗り替えたからといって性能が上がるわけでもない。それでも全塗装を行う理由について苅部専務はこう答えた。「同業者が道路工事をしていると、自然と建設機械に目がいく。機械が手入れされている会社は、やっぱり仕事も丁寧なんですよ。通行する人たちも意外と見ていると思う。建設機械は会社の看板みたいなものですからね。苅部建設と日立建機、2社分の」。「Hitachi」のロゴは、世界中のユーザによって今日も支えられている。

EX200のブームにも両社の名前が並んでいる

EX200のブームにも両社の名前が並んでいる

TOPICICT建機で農業を変える

苅部建設が拠点を置く下妻市は、関東平野の中でも有数の稲作地帯。同社は、今後の展望としてICT建機を活用した農業土木も視野に入れているという。
農業経営者の減少や高齢化が進む中で、個人で土地を管理し稲作などを行う「農地のオーナ制度」への関心が若い世代を中心に高まりつつある。同社では、土木用のICT建機で区画を整理し、さらにトラクタを使って整地まで請け負う、新たなビジネス構想を描いている。「今後、公共工事は減ったとしても、農業がなくなることは考えにくい。長い目で見て、ICT建機が新たなビジネスを切り拓く手掛かりになればと思う」(苅部専務)。
ちなみに、同社はもともと土木・建設と農業の兼業からスタートした経緯もあり、現在も農園を経営している。米を中心に、ホワイトコーンやネギも栽培。近隣の道の駅や大型ショッピングモールで販売されている。社長自身も直接手掛けるお米は、ポケットライスとして小サイズから販売。3つの品種を味わえる「食べ比べセット」は、ギフトやイベントの景品としても好評を博している。

EX200

納入年 1990年(平成2年)
号機 49335
運転質量 18.5t
定格出力(PS/rpm) 125/2,000
バケット容量 0.7m3
特徴 本格的なグローバルモデルをめざしUHシリーズをフルモデルチェンジ。外観は丸みを帯びたラウンドデザイン採用。UH-7型の油圧システム(OHS)をさらに進化させ、マイコン搭載のコントローラによりエンジンとポンプを同時に制御するE-P制御システムを搭載し、大幅な省エネを実現。油圧パイロット方式の操作系を採用し、オペレータの疲労を軽減(E-P制御は公益社団法人 発明協会主催の全国発明表彰で、発明賞を受賞)。
同社の資材置場で現在も稼働するEX200。大切に取り扱われ、しっかりとメンテナンスが施されていることもあり、30年経った今でもたくましく躍動している。

同社の資材置場で現在も稼働するEX200。大切に取り扱われ、しっかりとメンテナンスが施されていることもあり、30年経った今でもたくましく躍動している。

有限会社苅部建設

事業内容 とび・土工工事業、土木工事業、舗装工事業、水道施設工事業、鋼構造物工事業、石工事業、しゅんせつ工事業、造園工事業
代表者 代表取締役社長 苅部好美
設立 1975年(昭和50年)
所在地 茨城県下妻市原836-1