「私たちは同じ志を共有している」EX3500

「私たちは同じ志を共有している」EX3500

建機を訪ねて LEGEND13

PT Kaltim Prima Coal (KPC)

志をともにし、さらなる高みへ。
お客さまとともに高めた安定稼働と信頼性。

インドネシアでトップクラスの石炭生産量を誇る鉱山会社PT Kaltim Prima Coal(KPC)。その生産力を支えているのが日立建機の超大型油圧ショベル・EX3500だ。しかし、船出は決して順調ではなかった。高稼働率を維持するために、KPC社と相互にサポート体制を強化。それはやがて、互いの信頼関係を強固にする礎となっていく。

KPC社の創業とサスティナビリティ

PT Kaltim Prima Coal (KPC)は、膨大な量の石炭が埋蔵されているインドネシア・カリマンタン島東海岸沿いのサンガッタに位置している。
KPC社の設立は1982年(昭和57年)だが、同年、PTブキット・アサム(PTBA)を通じてインドネシア政府と石炭労働契約(CCoW)を締結。1989年(平成元年)までKPC社は詳細にわたるフィジビリティスタディを経て、現場および付帯設備の建設を行い、1991年(平成3年)に商業運転を開始した。
現在、KPC社の石炭生産量は商業運転開始時と比べ約9倍に拡大。その生産量は世界第8位の規模となり、インドネシア国内では最大の生産量を誇る鉱山会社となった。
KPC社が市場で高い評価を獲得できたのは、最上級の石炭品質と組織的な市場戦略によるところが大きい。最高財務責任者であるアショック・ミトラ氏によると、同社はトレーダではなくエンドユーザへの製品供給を大切にしているそうだ。「お客さまにお会いするたびに、高品質な石炭をご購入いただいていることを実感します。私たちの大きな目標は、確かな品質を担保したうえで、お客さまに優れた製品を供給していくことです」(ミトラ氏)。
KPC社の成功を牽引してきたもうひとつの方針は、サスティナビリティだ。何十年もの間、KPC社は石炭採掘後の森林再生とリハビリテーションを含む高度な環境保全を実施してきた。良好なコーポレートガバナンスの実施とともに、このサスティナビリティへのコミットメントは、インドネシアで最もサスティナブルな鉱業会社としての評価につながっている。

アショック・ミトラ氏

アショック・ミトラ氏

KPC社とのビジネスのはじまり

KPC社は商業運転開始に向けて、1989年(平成元年)に日立建機製品の導入を検討しはじめた。マイニングサポート部門の責任者であるウントゥン・プリハルディヤント氏は、当時の状況をこう振り返る。「当時は超大型油圧ショベルを提供できるメーカが限られており、機械の性能はもとより、サポート体制が重要でした。しかし、どのメーカもオンサイトサービス(稼働現場でのサービス)を行っておらず、安定的な稼働を維持することが課題でした」。
日立建機には、前例のない50,000時間にわたるフルメンテナンス契約(FMC)が条件として提示された。これに対し、日立建機は北米でのUH801の実績に基づく稼働率、経済性、アフターサービス体制などを提示。生産量あたりのコストの優位性などが認められ、同年のクリスマスにEX1800とEX3500、合計12台を受注するに至った。1990年(平成2年)8月、日立建機土浦工場から出荷が開始され、翌年1月に1号機が稼働を開始した。納入当初、管理事務所もない現場は、熱帯雨林の気候、スコール、40度の蒸し暑さという厳しい環境に囲まれていた。道路も整備されていなかったため、最大14tの部品を含む各部品は分解された状態で納入され、海外のサービス員および土浦工場の担当者によって組み立てられた。

ウントゥン・プリハルディヤント氏

ウントゥン・プリハルディヤント氏

高稼働率の維持に向けて

日立建機は、稼働開始2年目以降から機械メンテナンスの難しさを痛感することとなった。受注時の条件であった稼働率を保証するためには、3交代制で24時間機械を稼働させる必要があった。1回あたり30分の休車時間内で給油・給脂・点検を終えなければならず、加えて突発的な事故や定期部品交換などの工程が発生するため、熟練した日本人サービス員にとっても非常に高い目標稼働率だった。また、インドネシア人サービス員を対象に研修を実施し、現地スタッフによる作業をスタートさせたが、毎日の検査は予定時間を超え、点検にも漏れがあり、さらには機械に予想しない不具合も発生し、稼働率が低下。ついにはKPC社が日立建機を呼び出す事態となった。
「稼働率が低いが、今のサービス体制でいいのか?改善できるのか?」KPC社からの問いに、日立建機側は「期待に応えるにはノウハウが不足しています」と正直に答えるしかなかった。すると、同社は「オーストラリア人の経験者を連れてくるので、アドバイスを受けてください」とサポートしたという。加えて、メンテナンスコストも計画通りにいかないことをすでに知っていたのか、KPC社は通常では考えられないFMC条件の再交渉に応じ、生産量を確保するためにEX3500の導入台数を増やした。その後、アフターサービスに関して現地スタッフと相談し、教育カリキュラムを見直し、3交代制に見合う人員・サービス体制を確立。KPC社のサポートもあって、1993年(平成5年)と1999年(平成11年)には目標を上回る稼働率を達成し、サービス契約は100,000時間に向けて更新された。「今日、私たちは同じ志を共有しています。良好な関係のもと、現場で発生するすべての問題を協力して解決することができる。私たちはお互いを理解し、素晴らしいコミュニケーションを維持しています」(プリハルディヤント氏)。
初期導入されたこれらの超大型油圧ショベルの稼働実績とサービス力は、後に超大型油圧ショベルの追加受注やマイニングダンプトラックの大口一括受注へとつながっていく。

  • メンテナンスを受けるEX3500

    メンテナンスを受けるEX3500

サスティナブルな社会を築く

KPC社は次のような事業理念を掲げている。「サスティナビリティと石炭採掘はどこか矛盾のある組み合わせかもしれない。しかし、KPC社では責任を持って運営することをコミットしており、当社の製品である石炭は再生可能エネルギーの繁栄と社会を持続的に発展させる道を開くことができる」。責任を持って石炭採掘を行うことで、すべてのステークホルダーに利益をもたらし、日々生活するために必要な電力発電にも大きく寄与できるという理念だ。
地球温暖化やCO2排出量などの環境問題を背景に、石炭を燃料とする発電所の転換が世界的に求められている。そのような状況について、プリハルディヤント氏はこう語る。「今後は、石炭を発電所向けの燃料として提供するのではなく、ガスに加工して提供したり、ガスからプラスチックに加工したり、さまざまな用途に使用できるようにし、環境対応を図っていく必要があると考えています。これは我々のビジネスの前進でもあるのです」。
一方、採掘そのものでは生活環境と社会環境の両方を維持しなければならない。KPC社では、採掘後の現場の再利用方法として、バッファゾーン、森林再生ゾーン、経済利用ゾーン、文化ゾーンなどのゾーニングシステムを構築している。採掘後も適切な区画制度により、養殖・畜産・養鶏など、それぞれのゾーンに適した経済活動に使用できるのだ。重要なのは、採掘を終えて、ただ植林するだけではなく「KPC社が最高のコーポレートガバナンスを維持し、これを達成するために、100%のサスティナビリティを達成するという目標を持つこと」だとミトラ氏は語る。KPC社は、鉱業部門で最高のサスティナビリティ企業として認められ、数々の賞を受賞している。

日立建機に寄せる期待

デジタルテクノロジーが飛躍的に進化するなかで、KPC社はオペレーション全体の最適化に取り組んでおり、日立建機の技術も顧客のビジネスプロセスに貢献するものでなければならないと考えている。プリハルディヤント氏は、日立建機に対し次のような期待を寄せている。「オペレーション全体の最適化をサポートするためには、日立建機もデジタル技術の進化に取り組む必要があります。具体的には、運行管理システムをベースとしたソリューションの領域を拡大し、KPC社の16の異なる現場で稼働している機械の稼働状況をネットワークからリアルタイムでモニタリングできるようにしてほしいです。加えて、主要機器の故障予兆診断を行い、壊れる前に交換することで、ライフサイクルコストの低減を図れればと考えています。将来的には、新車・部品の提供のみならず、顧客の事業環境の変化に応じて経営・オペレーションの課題を全面的に解決するために、デジタル技術を活用し、すべてがネットワークで接続された統合システムを開発してもらいたいです」。
ミトラ氏は「日立建機との今の関係を続け、さらに進化させていきたい」と語る。日立建機が提供するソリューション「Solution Linkage」への顧客の期待は高い。

インドネシアのサスティナブルな企業に贈られる「ISDA 2019 Awards」を受賞

インドネシアのサスティナブルな企業に贈られる「ISDA 2019 Awards」を受賞

EX3500

納入年 1990年(平成2年)
号機 330
運転質量 328t
定格出力(PS/rpm) 842/1,800 ×2
バケット容量 18m3
特徴 鉱山で多用されている110~150t積みダンプトラックに適合するバケット容量18㎥、運転質量328tのマイニングショベル。鉱山で何より求められる大作業量を実現するため、大出力2エンジン式とし、高圧大容量の油圧機器を新規に開発。旋回輪には、長寿命の3列ローラ式旋回輪を採用している。足回りはショベル足であり、寿命延長のために高周波焼入れを施した鋳鋼シューを採用。整備時間短縮のために自動給脂システムと集中給油システムを装備している。
1990年(平成2年)に導入されたEX3500の内の1台。約30年にわたり使い続けられ、アワメータは100,000時間を遥かに超えた。

1990年(平成2年)に導入されたEX3500の内の1台。約30年にわたり使い続けられ、アワメータは100,000時間を遥かに超えた。

PT Kaltim Prima Coal (KPC)

ホームページ http://www.kpc.co.id/?locale=en

【サンガッタのロケーション】

サンガッタのロケーション